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真言律宗(しんごんりっしゅう)

真言律宗の特色

西大寺は鎌倉時代に叡尊によって再興されたのであり、南都七大寺の寺格をもち奈良仏教の伝統を受継ぎつつも、一方で鎌倉時代に叡尊が興起した密教と戒律の融合一致を説く新たな教旨をその法統とする鎌倉仏教の寺院ということができます。
その法統は後世「真言律宗」と呼称されるようになり、西大寺はその総本山となりました。一方、叡尊が各地に新建・修造・寄附した数千の寺院がその末寺となって、西大寺を頂点とする「真言律宗」の一大教団が形成されることになったのです。 その後の歴史推移の中で、当初の教団規模は縮小を余儀なくされましたが、現代でも北は福島県いわき市から南は熊本県玉名市にいたるまで90数ヶ寺の末寺を擁する宗団として存続しています。
奈良市内・近郊の般若寺、元興寺、福智院、不空院、白毫寺、海龍王寺、不退寺、浄瑠璃寺・岩船寺、宝山寺、長弓寺等々の由緒ある名刹も、西大寺の末寺であり真言律宗一門の寺院であることをご存知でしょうか。現代の西大寺は一寺院としてみれば、他の南都諸大寺に比して観光寺院として地味でひっそりとした存在ですが、その教旨たる叡尊上人にはじまる「真言律」の法燈においては奈良の地に隠然たる地脈を築いているということができるのです。

西大寺の主な行事

【光明真言土砂加持大法会】

光明真言会は、叡尊上人が文永元年(1264)に一門結束と民衆廻向を二大眼目にして創始した一門の最重要法会であります。
 真言(マントラ、呪・陀羅尼とも)とは諸仏への祈願句であるとともに、諸仏の悟りの境地を端的に示す呪文であり、密教では真言の念誦経によって行者が本尊と一体となって仏になること(即身成仏)を目指します。叡尊上人の終生の信仰の根本は真言密教であり、中でも特に意を注いだのが光明真言の信仰でした。
 「オン・アボキャ・ベイロシャナウ・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン」
この梵字23文字からなる光明真言は、密教の教主・大日如来の秘密心呪で一切諸仏菩薩の総呪とされ、古来最も重視されてきました。直訳すれば、「帰命し奉る、空しからざる遍照尊よ、偉大なる印相よ、摩尼宝珠と蓮華の光明を回らしたまえ」という意味に解されます。
 経典には光明真言の功徳として「抜苦与楽」「罪障消滅」そして本呪をもって土砂を加持して尸骸や墓上に散ずれば亡者は直ちに極楽往生できるとする「亡者往生」が説かれています。こうした功徳への信仰は、既に九世紀後半に認められますが、本格的浸透は平安中期以降で、「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽往生できるとする浄土教の称名念仏の普及と同軌の現象でありました。
 特に京都栂尾高山寺の明恵上人は、多くの著作を通じて光明真言信仰の宣布に尽力しましたが、それを承けて戒律の衆生救済の精神に基づき、この真言の功徳を広く民衆に波及すべく叡尊上人によって創始されたのが西大寺の光明真言土砂加持法会であります。まさしく密教の陀羅尼唱誦の信仰と戒律の饒益衆生の精神との邂逅の下で生み出された宗教セレモニーでありました。
 文永元年(1264)、本願称徳女帝の御忌9月4日を開白日とし7日間昼夜不断の法要として始修された光明真言会は、西大寺一門の遠近末寺の僧衆が万事をなげうって遅参なく必ず参勤すべきものとされ、一門結束の場でもありました。恒例化に伴い法会運営に莫大な経費が必要となりましたが、創始以後30年の間に、光明真言料として西大寺に寄進された田地の総数は実に73町弱に及び、西大寺一門の最重要行事として年々盛況を呈していった様子がうかがわれます。
 当初9月であった期日は、叡尊入滅後、その忌日8月25日を結願日とする7日間に変更されました。以来連綿とこの日程で修されてきましたが、明治43年以降は旧暦の廃止に伴い10月1~8日に改められ、鎮守八幡宮の秋の祭礼とも連動して、近在の住民からは俗に「こめしご」と訛り称されて、参拝者で大いに賑いました。ところが昭和17年戦中時局の諸事不如意から10月3~5日の3日間に短縮されて、そのままの日程で今日に及びますが、その精神と法会の形式は伝統を踏みはずすことなく毎年厳修され続けています。

【大茶盛式】

大茶盛式は、寺伝によりますと、延応元年(1239)年1月16日に叡尊上人が八幡神社に献茶した余服を民衆に振る舞ったことに由来する伝統行事です。「戒律復興」をめざした叡尊上人が不飲酒戒の実践として酒盛の代わりに茶盛としたことと、「民衆救済」の一貫として当時は高価な薬と認識されていた茶を民衆に施すという医療・福祉の実践という二つの意義によって、八百年近く連綿と受け継がれてきた宗教的茶儀であります。
 この行事の背後に「戒律復興」「民衆救済」の二つのキーワードがあることは上述のとおりですが、それに加えて第三の最重要ワードがあります。それは「一味和合」という言葉です。
 一味和合とは、同じ一つの味をともに味わって、和みあい結束を深めるという意味で、すなわち、自分は自分の茶碗で、他人は他人の茶碗で、別々に茶を呑んでお互い無関係だというのではなく、同じ一つの大きな器でたてた同じ味のお茶を、そこに集まった人々が、皆で助け合いながら同じ茶碗から廻し呑みをして、和合を深めて一揆のこころを涵養するということをいいます。
 戒律(ビナヤ)とは、釈尊が決めた仏教徒の生活規範で、「~してはいけない」という禁止規定が多いことから、人間生活の自由を縛るもののように思われがちですが、要するに「悟り」という同じ目的をめざす仏弟子たちが、仲たがいすることなくお互い助け合いながら結束して同じ目標に向かって修行に励むために、釈尊が定めた規範なのであります。まさしく一味和合のための法規範といっても過言ではないでしょう。
 実際、戒律を遵守する仏弟子宗団(=仏教教団)のことを僧伽(サンガ)といいますが、これを和訳して「和合衆」といいますのは以上のような事情によります。
 戒律復興を目指した叡尊は、自らの宗教活動のキーワードの一つとして「一味和合」を好んで用いています。叡尊上人創始の大茶盛は、単にお酒を飲んではいけないという仏教戒律の表面的な意味に止まらず、戒律のより深遠で本質的な意義である一味和合という理念を具現化した仏教行事であることを、ご了解いただければ幸いです。

基本情報

宗派名 真言律宗(しんごんりっしゅう)
本山 総本山 西大寺(そうほんざん さいだいじ)
別称(正式名称) 勝宝山 四王院 西大寺(しょうほうざん しおういん さいだいじ)
問い合わせ先 〒631-0825 奈良県奈良市 西大寺芝町1-1-5
TEL 0742-45-4700 
http://saidaiji.or.jp/
駐車場 あり 
代表 真言律宗宗務所
代表問い合わせ先 〒631-0825 奈良県奈良市 西大寺芝町1-1-5 西大寺内
TEL 0742-45-4700  FAX 0742-45-4720 

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