東日本大震災から10年

「絆」

～ 私たちは忘れない あの日のこと あの人のこと…　いまだからこそつながる ～

　2021年3月11日。東日本大震災から10年をむかえます。

　被災された皆さまには、10年の年月を長く感じる方も、短く感じる方もいらっしゃると思います。なかには、その日から時が止まってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。10年という節目を迎えたいま、仏教界では、被災された方や犠牲になられた方、大切な人を亡くされた方、震災の被害により苦しみを負われた方々に想いを巡らせて、祈り、追悼し、コロナ禍にあっても忘れないという気持ちを東北に届けるために、エールを送る企画を進めてきました。

　およそ1万6000名もの尊い命を奪い去った未曾有の災害について忘れることなく、犠牲になられた方々を弔い、被災された方々のこころに寄り添い続けることは私たち仏教者の務めであります。いまもなお、およそ2500名の方が行方不明であり、原発の影響で10年経っても故郷に帰ることができない方もおられます。大切な人や故郷の突然の喪失によって長期の悲嘆を抱える方々は多く、10年という月日が経過しても震災は終わっていません。

　新型コロナウイルス感染症の影響で、被災地での追悼や慰霊供養の行事も縮小傾向にありますが、全日本仏教会では、仙台仏教会主催の「東日本大震災10年慰霊供養」を協賛し、その様子をオンラインで社会に広く発信いたします。また、被災地をはじめ、全日本仏教会加盟の各寺院に呼びかけて、11日当日、地震発生時刻の午後2時46分にはこころをひとつに被災地と被災された皆さまへの祈りを捧げます。

　またこの機会に、これまでの10年間に現地での支援やボランティアにあたっていた方々や、仏縁者の方々からのメッセージを集め、私たちのこころは共にあり、忘れないという想いを届けます。そして、被災三県の仏教者や関係者の皆様にも、この10年間の思いをメッセージとしていただきました。あの未曾有の災害のなかで感じた抗えない自然の猛威に対する無力と、その異常な現実のなかで死者を弔い、ご遺族の悲嘆に寄り添う者には、いったい何が求められたのか。また、何を教えられ、気づかされたのでしょうか。そこから見える社会的な責任・役割についても確認してまいりたいと存じます。

　2011年3月11日から10年「私たちは忘れない あの日のこと あの人のこと…　いまだからこそつながる」を胸に、これからも東日本大震災と原発事故の経験を風化させずに未来へと語り継ぎ、祈りを繋げてまいります。災害に備えることで、同じような悲しみを生まないために……。

公益財団法人　全日本仏教会
理事長　戸松 義晴