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「首相及び閣僚の靖国神社公式参拝について(中止の要請文)」提出について

2010年8月11日

声明・談話・要望書 

標記の件に関しまして、本会は8月10日午後4時に、下記宛てに本会理事長名の要請書 (別紙)を提出いたしました。戸松義晴事務総長が福山哲郎内閣官房副長官を通じ菅直人内閣総理大臣へ手交いたしました。
 本会及び加盟団体は、仏教を通じて世界の国々との交流と相互理解をこれまで深めてまいりました。この度の中止要請文は、靖国問題を日本と中国・韓国などアジア諸国との政治・外交上の問題として捉えて提出したものではありません。
 本会はあくまでも「信教の自由」と「政教分離の原則」を堅持すべきという理由から中止要請文を提出いたしました。
同日午前の閣議後の記者会見において、首相及び閣僚が靖国神社公式参拝を行わない、との発表がありました。本会は、永年(本年33回目)に渡る要請文の提出の中、このたび菅首相及び閣僚が本会の要請に沿った決断をされた事に感謝の意を表します。
 また、同日閣議決定された「首相談話」に「朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施していきます。」との一文が入りました。
 本会は、小泉純一郎元総理大臣が当時行われた日韓首脳会談にもとづき、日本政府より依頼されたご遺骨の返還問題と取り組んでまいりました。本会及び各加 盟団体が広報・調査研究の経費を負担し、全国各地の寺院が調査に協力した成果が今後より生かされて、速やかに遺族の元へご遺骨が返還される事を願っており ます。


福山哲郎内閣官房副長官(左)へ戸松義晴事務総長(右)が要請文を手交

首相及び閣僚の靖国神社公式参拝について

 私たち仏教徒は、釈尊の御教え「いのちの尊重・慈悲の精神」にもとづき、争いのない世界を目指して活動してまいりました。
本会は、自由民主党政権時より、首相及び閣僚の「靖国神社公式参拝」に対して、再三にわたり反対の意志を表明してまいりました。
 菅 直人首相におかれましては、さる六月一五日の参議院本会議において、靖国神社公式参拝されない旨、明言されました。本会はこのことを高く評価するものであります。
 靖国神社は、特定の基準をもって合祀の対象とした戦没者を神霊として祀る神社であり、純然たる宗教施設であることは明白であります。
 拠って、一宗教団体である靖国神社に首相及び閣僚が公式参拝することは、どのような形式をとりましても、憲法に定める「信教の自由・政教分離」の原則に違反することは疑いの余地がございません。
 最高裁判所は、靖国神社等への公金支出が、金額の多寡を問わず憲法違反に当たるという、明確な判断を示しております。
 私たちは、戦後六五年のあいだ日本国民が守り育ててきたこれらの憲法の規定こそが、今日の日本の平和と繁栄の礎となっていることを、改めて確認し伝えていきたいと思います。
 戦没者の追悼は、国家が特定の宗教に関わって行うべきものではなく、各ご遺族がそれぞれに真実と仰ぐ宗教によってなされるべきものであることは、当然のことであります。
 以上の理由から本会は、現閣僚に対して靖国神社への公式参拝をされないよう、強く要請いたすものであります。

二〇一〇年八月一〇日
財団法人 全日本仏教会
理事長 有 田 惠 宗

内閣総理大臣
菅   直 人 殿