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【理事長声明文】戦後80年をむかえて

2025年5月15日

声明・談話・要望書 

 本年は、第二次世界大戦が終結して80年の節目をむかえます。
  戦争において犠牲となられた世界の方々に対し、心より弔意を表するとともに、戦争を経験し苦 しい思いをしている方や、今もなお苦しめられている方々のご心痛のほど、お察し申しあげます。

 かつて日本も、戦争を推し進めていった事がありました。日本国民はこの国家方針に従い、いの ちの尊厳を提唱すべき私たち仏教徒の中には非戦を貫いた者もおりましたが、戦争に加担・協力し た事実がありました。
  戦争で多くの方々が亡くなり、それは未来ある一人ひとりのいのちであったことを忘れてはなり ません。

  戦後40年の1985年、西ドイツのヴァイツゼッカー大統領が自国の過去を振り返りながら行った 演説で、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在に対しても目を閉ざすことになる。非人道的な行 為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすい」と世界に警鐘を鳴らしました。そ れからさらに40年を経た今、私たちは改めてこの言葉を深く受け止める必要があります。

  戦後生まれの人口が9割近くを占め、日本では戦争が遠い過去の話になりつつあります。戦時下 の極限状態においては、非人道的行為さえ正当化されました。
戦争を体験した祖父母、その話を聞 いた家族、体験者との密接な交流から聴いた話を受け継ぎ、残された資料などから、記憶や記録を明 らかにして戦争の悲惨さを想像する。そうした中で、私たちにとって戦争は二度とあってはならない ことと改めて思い起こさなければなりません。

仏陀のみ教えには次のようにあります。

  何びとも他人を欺いてはならない。たといどこにあっても他人を軽んじてはならない。悩まそ うとして怒りの想いをいだいて互いに他人に苦痛を与えることを望んではならない。(148偈)

  あたかも、母が己が独り子を命を賭けても護るように、そのように一切の生きとし生けるもの どもに対しても、無量の慈しみのこころを起こすべし。(149偈)

 また全世界に対して無量の慈しみの意を起こすべし。上に、下に、また横に、障害なく怨みな く敵意なき慈しみを行うべし。(150偈)
                                           『スッタニパータ』

 仏教徒である私たちは、戦争という過ちを再び繰り返されることがないよう、これからも世界平 和であり続けることを願い、先達への感謝を忘れずに、仏陀の和の精神を基調とし、世界平和の進 展に寄与してまいります。

 
2025(令和7)年5月15日   
公益財団法人 全日本仏教会 
理事長 日 谷 照 應